** せっかく東京で暮らしてるんだから、ここへもあそこへもいっちゃおう!
"東京散歩" は、そんな中で FLORA*2 澤田の琴線にふれた場所を
より抜きでご紹介するシリーズです
今から少しだけ季節をさかのぼった、桜の頃に行ったワンデイトリップ。
青梅線 沢井駅にある
「澤乃井 櫛かんざし美術館」をご存知ですか?
新宿駅から小一時間で、こんなに空気の澄んだ場所へ来れるなんて!
無人の沢井駅から、多摩川上流の澄んだせせらぎに架かる橋を渡って、森林の香を心ゆくまで味わいながら歩くこと10分。「櫛かんざし美術館」へ到着します。
この「櫛かんざし美術館」では、くし、かんざし、そして今もう日本の生活の中から消えてしまった矢立、紅板といった実用品、いえ、それはただの実用の品でなく、伝統の工芸品でもあるのですが、江戸時代から昭和まで、系統だって展示されている美しい美術館です。
そのコレクションはとても一度に公開することはでくらい膨大らしく、春、夏、秋、冬と季節毎の展示がされています。私が行ったときは春の展示の真っ最中で、桜の柄をあしらった数々の工芸品を拝見することができました。
なんといってもため息がでるほどの、技術の粋をあつめた品々に圧倒されます。
時代と共に髪型の流行も移り変わり、それに合わせて髪飾りである、櫛、かんざしの形も変容していく様がなんとも興味深いのです。
髪型の移り変わりが、よくできた縮小サイズのかつらによって説明されており、どの部分にあしらった飾りであったかも見ていくことができます。
今はもう手に入れることのできないべっ甲の櫛。
上質な素材にほどこされた細やかな螺鈿の、そして金工の細工。
しっとりとした蒔絵の飾り櫛。
歩くたび、しゃらんしゃらんと音がしたという、 びらびらかんざし。
江戸の時代は貴重品だったのでしょう、透明なガラスを用いた笄(こうがい)。
今では気軽なプラスティックが新鮮な高級品だった時代もあって、斬新なデザインに驚いたり。
まあ、繊細な花のつまみかんざしがなんて愛らしいこと!
しかしなにより心打たれるのは、日本人がどんなにか四季折々季節のうつろいを大切に生きてきたかということ。どれだけの高度な工芸技術がかつて実用の品を飾ってきたか。世界に誇れる、日本の美。その証をこの美術館で、私はもう展示ケースのガラスが息でくもるほど、ひとつひとつ見つめて回っておりました。
この美術館のもう一つのお楽しみは、そこから望める多摩川上流の眺めです。
大きく、ゆったりと流れる東京で見るそれではなく、細くときには険しいけれど清らかな川の流れとやさしい木々の緑。
このときカメラを持って行かず、携帯で撮影した写真なので、あまり美しいものがなくて残念です…。
実はここへは2度目の訪問でした。1度目は夏にきたことがあります。緑深い夏の季節も、この川の眺めは涼をさそって素敵です。
6月1日からは「夏の展示」となり、また違う趣の品々が展示されることでしょう。
駅まで帰る途中にある、
澤乃井園隣接の和食レストラン
「豆らく」で遅いお昼をいただいて。
ちょうどランチタイムの波がひけたころで、ガラスいっぱいの桜の花を独り占め(いえ、正確には二人占めですが)。酒蔵 澤乃井さん直営のこのレストランでは、季節限定のおいしい日本酒をいただくことができます。ほんのひととき、自由で静かな贅沢時間でした…。
後日、この続き
「青梅 昭和レトロの町編」をお届けします!
* FLORA*2 澤田 *